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[第12話]内診台2

男性の尿道口付近の解剖学的構造はそれ程複雑ではないが、女性のそれは、溝や隆起があって、出される尿に見せかけの病的所見を作り出す場合がある。

自分で普通に出して得られた尿は専門的には自排尿、膀胱の中に貯まっている尿を器具を使って膀胱より直接採取した尿は膀胱尿と呼ばれる。

男性の場合、自排尿と膀胱尿の間に成分の違いは殆ど認められない。しかし、女性、特に成人女性の場合、膣よりの分泌物、出口付近の汗、排便後の少量の便、下着由来のゴミのたぐい、排尿後の一滴程の尿がしばらくの間に変性したもの、などが自排尿に混じって出てくるのはよくあることである。ために、同一人物なのに、膀胱尿には何の異常も認められなくて、自排尿には異常所見がある、と言うケースが生じる。この事実を軽視すると、診断、治療を誤ることにもつながる。これを防ぐために、尿検査の前には、不用な付録を連れた出始めの尿は捨て、途中から以後の尿をうまくコップに入れるように指導するのだが、検査を受ける側にしてみれば、説明するだがうまく理解できず、実際にそうやってみるのはさらに難しいらしい。初めて病院に来た人、辺り一面やや緩み気味の人、耳の遠い人、少しボケ症状のある人とかでは、うまく出来るのがむしろ珍しい。

このような人達から膀胱尿を得るために、ベッドに普通に寝てもらっても、尿道から細い管を入れることは容易ではなく、特殊な姿勢が必要となる。このような膀胱尿の採取操作に加えて、膀胱の中に胃カメラの小型版のような器械を入れて検査をしたり、いろんな処置をしたりするには、男女差なく内診台が必要になる。病気のためだから致し方ないものの、あまりしたくない格好をしなければならない、婦人科にある例の台である。婦人科の診察に際して、内診台が用いられることは一般的にかなり知られているが、泌尿器科にも置いてあることは、あまり知られていない。

男性でこの内診台に乗るチャンス?に恵まれるのは泌尿器科だけであるが、下着をとって台の上に乗る様に説明するとスキを見て逃げられてしまったりえらく立腹されたり 台の上でただ正座した姿勢になられたりという事件も年に数度ではない。

ただ何日か前に、もっと羞恥指数の高い経験をしたことが間違いのない若い女性が
「そんな台に乗るの恥ずかしい」
と言って、ダダをこねているのには同情しないことにしている。

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