- 2008-02-14 (木)
- 親父が執筆したもの
包皮が亀頭を覆っていて、包皮を翻転出来ない(俗に言う、むけない)状態を包茎と言うが、子供ではこれが普通であり、就学前頃までは包皮と亀頭が癒着していることもある。
成人して病院を受診する状態は二種に分類される。包皮をめくろうにも、先端の輪の直径が狭いために亀頭を露出させることが出来ない真性包茎と外見は包茎状でも、包皮を容易にめくることが出来たり、ボッ起時には自然にめくれてくる仮性包茎である。その大部分が仮性包茎である。
真性包茎は先の開いている部分が狭く、尿の出方や、出る方向に異常を来すことがある。また、おからのような乳白色の恥垢(ちこう)が貯まりやすく不潔になりやすく、形成手術をしたほうが良い。
仮性包茎は包皮内を清潔にしておけば、排尿や性的傷害は無い。ただ青年期には、女性が胸が貧弱で悩むのと同じような意味合いから、劣等感の原因の一つになることがある。
一般に、包茎手術を希望して来院する青年が一番気に病んでいるのは、そのままにしておくとどうもガンになるらしい、という知識である。これは割礼(かつれい)といって包茎手術を習慣的に行うユダヤ人や、回教徒には陰茎ガンの発生が少ないという事実に基づいて、大衆誌などで広く世に広まっている“常識”が受診理由である。しかし、陰茎ガンは数あるガンの中でも比較的マレなガンで、包茎を放置しておくと、そのうちほとんどガンになってしまうというのは間違いである。宮城県、大阪府、岡山県で行われたガン発生調査結果によれば、陰茎ガンの発生率は、人口百万人に対して僅か1〜5人である。外国の調査結果でも、高率と言われるブラジルやジャマイカでさえ6人前後である。だから包茎ゆえに陰茎ガンになる確率は、煙草を吸い続けて肺ガンになったり、飲酒運転して死亡事故につながったりする確率よりは、問題にならないくらいに低い。
頼まれて、八十少し前の仮性包茎手術をしたことがある。通常なら私の気の進まない年齢である。
連れ合いを亡くし、暫く入院する事情が出来た、その際息子の嫁に“しも”の世話にならにゃならん、その時嫁に、「あらあ、お義父さんは包茎だったのね」って見られるのが嫌だ、ただそれだけのために手術をして欲しい、という事情であった。私はその老人の切ない希望を受け入れた。
ほかに、男のメンツのためとか言う理由にうまく反論出来ずに、3ケタの数の若い男性に手術をしてきた。大手術ではないにしろ、曲がりなりにも、十針くらいは皮膚を縫い合わせてあるにもかかわらず、手術当日の夜に、現場から(電話のあっちで女性の声が聞こえた)
「今、し始めたんだけどおー、糸がねー、えらく都合悪いわー、血 も出るしー、センセなんとかしてやー」
と、自宅に電話がかかってきたこともある。