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[第7話]血尿の事

尿に血液、正確には赤血球の混じる状態を血尿と言う。血尿は肉眼で見てそれと分かる肉眼的血尿と外見上は普通の尿の色をしているのに、顕微鏡で初めて赤血球の混入が認められる顕微鏡的血尿とに二分される。

赤血球は血液1ミリリットル中に約四十五億個くらいも含まれているので、ほんの少量が混じっても尿は赤色を呈する。逆に、かなりの血尿が1~2日続いたからといって、直ぐに、体の中の血が空っぽになる訳ではない。

ほかに、血尿はあっても、他に痛みや発熱などの症状を全く伴わないものは、別に無症候性血尿と呼ばれる。これは何時も何時も真正面だけを睨んだ姿勢でやや暗い、くみ取り式のトイレをいつも使い後始末の紙をしげしげと広げて見る習慣はない女性の場合長い間気づかれないままのことがある。

顕微鏡的血尿を理由に病院を訪れる人達は、職場や学校の検診で言われた、自覚的に苦痛を訴えない集団である。つまり来院は第三者の半強制的勧めによる。ここが肉眼的血尿を訴えてやって来る人との決定的な差で、検査にかなり非協力的である。顕微鏡を手元に置き、日々自分の尿を調べてみるのが趣味である、と言う人がいれば、自らの意志で来院するかも知れないが、そのような変人は極めて少ない。

外見的に普通の血尿と変わらないが、顕微鏡で調べてみると全体が赤いだけで、赤血球がほとんど認められない尿があり、ヘモグロビン尿と言われる。普通の血尿を、透明なゴムのヨーヨーに赤い液を入れ、水の中にぎっしり浮かべた状態とすると、風船がほとんどパンクして、中の赤い液がみんな水の中に出てしまった状態がこれである。炎天下に長時間重い荷物を背負って行軍するといった、ハードスケジュールをこなすと、ションベンに血の混じることはよく知られた事実である。近年では、マラソンのゴール後の、一過性の血尿もよく報道されている。こうした血尿はほとんどがヘモグロビン尿で、極端な疲労が赤血球を包んでいる膜を破ってしまうことによる。疲労が回復すれば自然に消失するのが普通である。

汗を沢山かき、尿がほんの少ししかでない場合には尿は濃縮され、色も、臭いも濃縮され、血尿と間違われることもある。

ある種の薬剤で、尿が血尿に似た色合いを呈することもある。

例えば、寝る前にみかんを20個食べた翌朝の尿は、かなり血尿に似た色となる。

このように、ひとくちに血尿と言ってもその内容はいろいろであり、電話口で

「大分前からオシッコに赤い色がつく、痛くも痒くも無い、検査は恐ろしいから嫌だ、先生、何という病気でしょうか?うつるんでしょうか?薬で治るでしょうか?食べ物と関係あるでしょうか?ガンでしょうか?」

などと聞かれても、一発回答は無理というものである。

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