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[第3話]パイプカット、シンボルが折れる、男性自身の能力と構造に関する深ーい考察

精子は睾丸(こうがん)で作られ、精管を通って尿道の奥にある精のうと呼ばれる小さなタンクの中に送り込まれて、待機し、出番を待つ。射精は、その精子が近くにある前立腺中に含まれる液と混合して放出される現象であるが、この前立腺液と混じる課程を経なければ、精子にオタマジャクシの様な元気が出てこないところが重大なミソである。従って睾丸に針でもでも刺して、精子を吸い出し、これを直接子宮内に放り込んでやれば、妊娠も可能ではないかという考えは乱暴である。

精液を顕微鏡で覗いて観ると、オタマジャクシの様な姿をした虫が無秩序に動き回っているのが観察される。しかし、そこに子宮より分泌される粘液を端から触れさせると、その運動性は一様となり、ちょうど、池の鯉が新しい水の落ちる場所に群がるような光景に変化する。この親和性がなければ、いかに馬力のある精子でも子宮内に入ることは出来ない仕掛けになっている。子宮内部にたどり着いた精子はさらにご苦労にも、自力で子宮を抜け出してさかのぼり、卵巣と子宮を結ぶ卵子の通路、卵管の中で卵巣から降りてくる卵子を待つ。そして2人は手に手を取って再び、子宮まで戻ってくる。これが出会った所ですぐさまねんごろになると、子宮外妊娠という事態を引き起こし事は重大である。いっそのこと、精子は最初から子宮の中でじっと待っておれば良さそうなものだが、男が待ちきれずに女を迎えに出るというのは細胞単位でも同じ様である。

このように受精が成立するまでに必要ないくつかの行程のうち一つでも欠けると、通常の妊娠は不可能になる。これを逆に避妊手段に利用する為に行う手術を男性ではパイプカット(精管結紮)、女性では卵管結紮という。手術時間も手間も男性側の方が簡単で、アメリカでは年間に万単位の人が受けており、何の副作用の無いことも証明されている。しかし何故か、我が国では不妊手術を受ける人は圧倒的に女性側に多い。

パイプカット手術には入院は必要なく、歩いて来て、歩いて帰宅出来る。残念ながら保険の通る診療行為ではないが、そんなに値段の高いものではない。ただ、手術後にはちょっとした注意が必要で、カットした部位より出口に近い輸送路には、既に発送済みの精子がいる事実である。つまり、術後5~6回分の射精(品のない男の世界では、それを“5、6パツ”などと表現する)に関しては、手術前と条件は何ら変わらない。だから、手術後は、小さなガーゼが患部にあたっているだけなので、セックスも可能だからといって「やった、やった、今日からは安心してやるぞー」と直後から無防備にハッスルするのは間違いのもとである。

不妊手術は数多くある他の避妊手段に比較して、ずば抜けた確実性を持っているが、人生の予定が変わって、後日、精管の繋ぎ直し形成手術を依頼されても、その成功率は週刊誌などで言われているほど、高くはない。

ところで、一握りの人達は、陰茎の中にはれっきとした骨があると信じている。少し進んで、軟骨くらいはあるのだろうと理解している人種もいる。ものがものだけに、男性はもちろん、女性もその構造に思いを巡らせることが、一生のうちに何度かあるはずである。陰茎には骨も軟骨も存在しない。

構造を寿司のカッパ巻きに例えると、キュウリの部分は尿道、シャリは海綿体と呼ばれるスポンジのような組織、ノリは白膜と言う頑丈な覆い、その外側が皮膚にである。

米の部分は体積の変化が著しく“いざ鎌倉”の時には、中央の指令により増大することになっている。この尿道や海綿体を補強しているのが白膜でとても丈夫に出来ている。従って、陰茎が何らかの外力により“ポキン”となっても、陰茎骨折とは言わず、陰茎折症という病名が付けられる。

陰茎折症は、原則としてボッ起が前提として存在しなければ発生しない。比較的珍しい種類の外傷で、報告例は日本中でも年に二十例に満たない。

数少ない統計資料によれば、原因となった背後の一般的な状況は寝床の中でボッ起陰茎を手で曲げたり、押さえたりという自慰の類似行為が約半数を占めて圧倒的に多く“最中”というのは心配する程多くはない。

症状としては受傷と同時に、白膜の断裂音として本当に「ボキッ」とか「ブスッ」といった音がするとされる。

事件が発生してから受診までの期間はその当日が最も多いが、一方、1~2週間後というのもあり、羞恥心もさることながら、この外傷は思ったほどの痛みがないなど、比較的苦痛を伴わないことがその原因であろうと思われる。

症状がきわめて個人的なものでは単車を運転中にバウンドして転倒し、その時たまたまボッ起していた急所を打った、浴室で石鹸をふんづけて、その時ボッ起していた陰茎を打った、久しぶりのラブラブタイムにて、パートナー(文献には、興奮した女性とある)が馬乗りになり激しく動いたため、早朝、男性特有現象発生時、子供(妻ではない)が突然「おとーさーん」と布団の上に飛び乗ってきた、など、人間味あふるる話が多い。

この外傷は医学的にもマレな部類に入るが、その特殊性故に被害者自身の口から他人に話されることは皆無と言ってよく、また医療側にしても、職場の同僚の目に触れるかも知れない病状証明書や、保険の入院証明書には、武士の情けで、別の無難な病名を書くことも多い。それらの結果として、この外傷は一般の人々の間ではついぞ話題になることのない、いわば幻の不幸である。

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