- 2007-12-17 (月)
- 親父が執筆したもの
内科や外科などと違って泌尿器科は一つの科として独立するようになってから日が浅い関係上か、一般の人達に未だなじみが薄い。その通念は何となくシモの方の、あるいはシタの方のヤマイを扱う科程度の域を脱していないのが現状である。
泌尿器科と言う言葉に、品が感じられないのは日常的によく用いられる、し尿処理場の、「し尿」という言葉と何やら似たような響きがあるのも関係しているようである。科宛てに来る郵便物の中には、泌尿科はかろうじて許せるとして、「泌」が「秘」になってい るのは珍しい事ではなく、ご親切にその秘の回りを丸で囲んで仕上げてあるのもある。ひどいのになると、へ尿器科、念が入ってその「へ」が「屁」になっているのもあり、泌尿器科医を大いに落胆させる。
医学とは少なくとも、一般大衆よりは近い距離に位置すると思われる薬学の先生からさえも「私の母が痔で困っとるんですわ一、明日そちらを受診させますのでよろしゅうお願いしますわ一」などと電話を貰ったりもする。
入院患者にかなりの検査、話し合いの時間を経て「それじゃ、○○日に手術をしましょう」と話すと「手術は外科の先生にやってもらうんですか?」と言われてがっかりすることもある。
訪れた外来患者に「何処が具合悪いんですか」と尋ねたら「ここにブツブツが」と舌を見せられ「それでなんで泌尿器科に?」と聞いたら「「シタ」のヤマイは泌尿器科じゃないんですか?」だったという嘘のような本当の話もある。
泌尿器科病棟に勤務する独身ナースが、他人から何処の病棟におられるんですかと聞かれると、やや小さな声で泌尿器科ですと答えるらしいのは、泌尿器科医として、とても不本意である。少なくとも、はい外科病棟です、とか答える時より、声に張りがないのは事実のようである。
泌尿器科は、尿が通過する臓器、つまり腎臓、尿管、膀胱、尿道に加えて、男性の生殖器(精巣(俗にいうキン○マ)、前立腺、陰茎など)、ホルモン分泌器官として重要な副腎、などの病気を扱うれっきとした外科の一分野である。泌尿器科医はもちろん、リン病などの性病も診てはいるが、それがほとんどの仕事であった時代は過ぎ、今や臓器移植の分野では最先端を走っている。
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